<都立中学>都立中高一貫校 先生の環境(指導体制・公募制など)について

 

都立中高一貫校の指導(先生)を取り巻く環境まとめ

もともと東京都では、都立中学(都立中高一貫校)を設立するにあたり、意欲の高い先生を集めるための公募制や中高相互乗り入れのため中学・高校の両方の免許を持つ先生の集積、校長の裁量の強化など、他の学校にはない特色を指導体制にも取り入れていました。

そして都立中高一貫校の全校で第1期の卒業生を輩出した2018年6月に、生徒・父兄へのアンケートや校長へのヒアリングを通じて検証がなされました。

その結果、東京都教育委員会「都立中高一貫教育校検証委員会報告書(2018.6発行)」として公表されました。ここでは、報告書を参考にしつつ、都立中高一貫校の教員(先生)を取り巻く環境と成果、さらに課題について述べていきます。

 

<都立中高一貫教育校検証委員会報告書 教員・指導体制の項まとめ>

設置時に検討されていた公募制人事の実施や教員の育成に関する取組、中学校の教員と高校の教員の相互乗り入れ授業の実施等について、着実に対応が図られている

 

公募制人事については、直近年度の応募者数が大きく減少しており、今後の動向に留意を要する

 

教員の適切な配置、各校における計画的な指導体制の構築、OJT・研修・自己啓発を通じた教員の着実な育成を進めて行くことが必要である

 

では詳しく、制度設計時の考えから、指導体制の設置・育成の考え方と現状、今後の課題についてみていきましょう。

検討時における都立中高一貫校の先生の配置・育成

都立中高一貫校を検討していた当時の先生に対する、要求事項・採用・育成方法などは大まかには以下のようになります。

通常の学校にない、むしろ都立高校の進学指導重点校に近い考え方です。

 

<教員免許について>
中学校と高等学校の相互乗り入れ授業を行うため、原則として、中学校の教員免許状及び高等学校の教員免許状を有する者を配置する。

 

<教員の採用・異動>
当面、中高一貫教育校間の異動を前提とした採用・異動は行わず、区市町村立中学校及び都立高校の教員人事の一環として採用・異動を行う。

教員の能力・意欲に応じた人材の適所への配置を行うための方法について、開校当初公募することを含め検討する。

中等教育を一貫して推進する観点から、校長の在職期間の長期化を図る。

 

<授業担任等>
中学校の教員が前期課程(中学校)の授業を、高等学校の教員が後期課程(高等学校)の授業を担任することを原則としつつ、相互乗り入れ授業を積極的に行う

将来的には計画的・継続的な指導を行う観点から、前期課程(中学校)及び後期課程(高等学校)のいずれにおいても指導できるよう、教員の養成を行っていく

 

<教員研修等>

相互乗り入れ授業ができるよう、教職員研修センターにおいて研修を実施するとともに、校内での研修・研究体制を充実する。

教養教育の内容について検討を行うとともに、教職員研修センターにおいて、教養教育に関する研究を継続的に進め、その成果を踏まえ研修を実施する。

 

<給与>
都立中高一貫教育校の教員給与の在り方は、同一の給料表を適用する可能性を含め検討する。

(平成14年4月「中高一貫教育校の整備に関する検討委員会報告書」より 平易な言葉にした上抜粋)

 

先生の配置にあたっては

都立中高一貫校 先生の配置・指導における現在の状況

先生の配置におけいては、以下の3つの施策が中心になりました。

 

【公募制人事】
意欲・関心や、学習や進路等に関する指導力のある教員を公募し配置

設置目的を踏まえ、「公募制人事」と「一般異動」により、指導力のある教員の配置

 

【一般異動】
校長の人事構想を踏まえ、中高一貫教育に求められる適性や専門性、本人の意向等を考慮
して、適切な人材を配置

校長の人事構想を踏まえ、中高一貫教育に求められる適性や教科指導力等がある人材を配置

 

【異動基準の弾力的運用】
学習指導等に優れた主任・主幹教諭の在籍期間を弾力的に運用(延長が可能)

校長が目指す学校の実現のために、異動のルールを緩和できる

 

アンケートによる評価と課題

各学校へのヒアリング調査で、中高一貫校の教員に求められる資質・能力として、「中学校段階・高校段階を通して学習指導から生活指導まで全般に対応できる、意欲と柔軟性」と、難関大学を希望する生徒も多いので、「受験指導等の核となる優れたノウハウ等をもった教員が必要」が多くありました。

 

これらのニーズに対して、意欲と柔軟性がある若手教員については、公募制人事により一定程度確保できているとおおむね評価できます。

 

一方、中高一貫教育校では、中学校1年生から高校3年生までの6学年にわたる学習や生活、進学等の指導を行う必要があるため、同じ学級数の都立高校等と比べて教員が対応する領域が広く負担が大きいといった懸念があり、受験指導等に関して高い指導力をもつベテラン教員等が集まりづらいとの声もありました。

 

都教育委員会としては、都立中高一貫教育校は、進学指導重点校等と同様組織的・計画的な進学指導を推進することができるよう、各校の進学対策の取組を支援していくこととしており、校長の人事構想を踏まえて高い教科指導力等のある教員を配置するように努めています。

 

また、都立中高一貫教育校における学習指導等に優れた主任教諭及び主幹教諭については、校長の人事構想において学校経営上必要とされ、本人も残留を希望する場合には在籍期間を延長できるよう、異動基準の弾力的運用が行われています。

この運用は、現在、都立中高一貫教育校の各校において活用されています。

 

公募制人事に関しては、機能しているとの評価がある一方で、直近年度の応募者数が大きく減少し、実際の配置数についても募集枠に対して5割程度の充足率となっています。このことから、必要に応じて中高一貫教育校の魅力をより効果的に教員へ周知する方策を検討するなど、中高一貫教育校を担う意欲のある教員の確保に努めていくことが求められます。

 

 

都立中高一貫校 先生の育成における現在の状況

先生の育成については、「通所研修」、「OJT」、「自己啓発」の3点が中心です。(個人的には、業務時間外の頑張りである「自己啓発」を施策に入れるのは納得いきませんが…)

 

<通所研修>

【中高一貫教育に関する研修】
→中高一貫教育に関する基礎的・共通的な知識の習得
【教科等・教育課題研修】
→教科や教育課題ごとの専門的指導力等の向上

まとめ:設置当初は、中高一貫教育に関する知識やノウハウをもつ教員がいないことから、東京都教職員研修センターにおいて中高一貫教育に関する通所研修が集中的に実施され、教員の育成が図られました。

平成22年度には都立中高一貫教育校全校が開校し、各校におけるノウハウ等の蓄積やOJTの実施が可能となったことを踏まえ、研修の内容・実施回数等の見直しが行われました。

そして現在は、学校運営や学習・生活指導等の能力向上については各校で工夫されたOJTが、各教科等に関する専門性向上については通所研修が中心となって、教員の育成が図られています。

 

<OJT>
【各学校におけるOJTの実施】
→学校の実態に応じて必要なOJTを工夫して実施
【都教委によるOJTの支援】
→異動基準の弾力的運用
→東京都教職員研修センターによる「OJT・自己啓発支援」「都教委訪問」等
→指導教諭の活用(※次項で説明)

まとめ:OJTは、ベテラン教員と若手教員のペア制による指導力の向上や、他の都立学校における公開授業やセミナーへ参加させ習得したノウハウ等を学校内で共有するなど、各校において工夫された取組が行われています。また、学習指導等に優れた主任・主幹教諭の異動基準の弾力的運用を活用したOJT体制の整備なども取り組まれています。

 

 

<自己啓発>
【教員による自己啓発の取組】
→通所研修やOJTでの学びを生かし、自己を高めるための自己啓発に取組
【都教委による自己啓発の支援】
→東京都教職員研修センターによる「OJT・自己啓発支援」等

 

指導教諭とは

<目的>

高い専門性と優れた指導力を活用し、教員全体の意欲と学習指導力の向上を図るため設置

<職務>

自校及び他校の教員に対して教科等の指導技術を普及させること。模範授業や研究協議会等を通じて、都立中高一貫教育校の教員の教科指導力を向上させていく。

具体的な職務内容
① 校内OJT:自校において、校内OJTを実施する。
② 模範授業:年3回程度の模範授業及び研究協議会を実施する。
③ 公開授業:他の教員に対し授業を見学させる機会を設ける。
④ 個別相談:自校において、他の教員へ学習指導に関する指導・助言を行う。
⑤ 授業支援:各学校の求めに応じて授業を観察し、指導・助言を行うことができる。
⑥ 教科指導資料等開発:優れた教科指導のための教材開発等を行う。

 

 

都立中高一貫校の先生に対する評価

 

一般の都立高校より都立中高一貫校の先生に対する信頼度や指導に対する評価は高い

詳細は「都立中高一貫教育校検証委員会報告書(2018.6発行)」を参照のこと。
(個人的な要望をいえば都立高校の進学指導重点校との差が見たかったです)

 

 

<各校へのヒアリング調査より>

一般的に中学校の教員はきめ細かい生活指導等が得意であり、高校の教員は進学・受験指導等が得意であるなどの声が聞かれ、各校において教員それぞれの適性等を踏まえつつ、全体のバランスや状況等を考慮しながら学校運営体制が組まれている。

 

<学生意識調査より>

都立高校生意識調査では、学校に対する評価として「授業が分かりやすい」や「生活に関わる悩みを相談できる」と答えている生徒の割合が全都立高校平均に比べ高く、教員に対する印象として「信頼できる」や「生徒をよく理解している」などと答えた生徒の割合も全都立高校平均に比べ高くなっている。

 

各都立中高一貫教育校において、中学校・高校の区別なく、全教員が生徒の6年間の学校生活に関わっていることが、きめ細かな生徒理解や生徒との信頼関係の構築等に寄与していることがうかがえる。

全体のまとめ

総じて、都立中高一貫校の先生たちは意識が高く、生徒にも信頼されている先生が多いといえます。1点心配なのは、公募の人気が低下しているということです。

これは、より長期間で見る必要がありますが、その後の「キャリア」や「金銭」を努力の割には、報われていないのでは?という疑念が都内の先生たちにあるのではないでしょうか。

 

もともと公教育なので、都立中高一貫校が目立つことを良しとしない風潮もあるかもしれません。ただ、国立の付属校が今後、進学校でなく研究校としての色彩を強めていかざるを得ない情勢の中、もう少し先生たちの待遇を良くすることも必要ではないでしょうか。

 

国立付属校の研究校化については、上のリンクと、こんなところです。

「教員養成大学(学部)の付属施設なのに、進学校化して、設置目的である教員養成とかけ離れていない?大学のガバナンス効いていないのでは」ということがいろいろ問題になっていますが、改善(改悪)策が具体化していきそうです。

 

<附属学校の存在意義の明確化と大学のガバナンス>
・公私立とは異なる国立大学附属学校としての存在意義・役割・特色の明確化
・「入学者の選考―教育・研究―成果の還元」の有機的なつながりの明確化
・教職生活全体を見据えた教員研修に貢献する学校への機能強化と、校長の常勤化

 

「教員需要の減少期における教員養成・研修機能の強化に向けて―国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議報告書―(概要)」より抜粋 文部科学省HP

 

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