<都立中学>併設型中高一貫校は中等教育学校へ移行する方向に

 

中等教育学校と併設型中高一貫校の課題

都立の中高一貫校10校全校で、始めて卒業生を送り出したことから、先般東京都教育委員会が出した「都立中高一貫教育校検証委員会報告書」が非常に示唆に富むものになっています。

これは、都立中高一貫校の学生へのアンケート、校長へのヒアリング、その他教育委員会が実施した都立高校や都内公立中学校の学生・保護者へのアンケートから、都立中高一貫校の学生の意識や学校が掲げている目標に対する評価から、検討を要する改善点まで幅広く検証したものです。

 

この中で、様々な検討を要する課題として「併設型の中高一貫校のあり方」がクローズアップされました。

中等教育学校での「中だるみ」や「人間関係の固定化」も課題となっていますが、校外活動への参加などで対策が取られている一方、併設型の課題に対してはきちんと対策を取られていない状況です。

 

都立 併設型中高一貫校の検討課題

中高一貫校としての最大のメリットである、6年を通じた体系的な教育ができない

併設高校の人気が低い上に、教員の受験対応に時間を取られる

高校からの入学者との差がある(意識・成績共に中学からの生徒が上)

併設型中高一貫校は、中だるみ防止のためにも高校からの入学者を募集していました。

しかし、校外活動を活発にさせることで中だるみを防止できる一方、併設高校で募集する意義が薄い上に、そもそもの目的である6年を通じた体系的な教育が不十分であるという結論になりました。

 

では、それぞれの課題について詳しく述べていきます。



中高一貫校として6年を通じた体系的な教育ができない

先取り学習

教育課程の基準の特例の活用(いわゆる先取り学習)では、併設型中高一貫校でも、高校段階の指導内容の一部を中学校で教えている学校はあるものの、高校からの入学者もいるので、高校段階で再度学習することになります

実際、「内進生にとって、高校での授業は2度目の内容となり、緊張感を欠くことがある。」「外進生に対する補習等の対応が必要である。」といった意見が聞かれました。

 

系統的な教育活動

中等教育学校では、総合的な学習の時間や学校設定科目、学校行事等の特別活動などを計画的に組み立てて、6年間の体系的・系統的な教育活動が行われているのに対し、併設型では、探究的な学習等が概ね中学校段階の3年間にとどまるか、高校段階で取り組まれていても断続的になっている傾向があります。

併設型では、高校からの入学があることから、併設型中学校での学習を前提とした中高一貫での体系的・系統的な教育活動や、教育課程の基準の特例を活用した柔軟な教育課程の編成を行うことが難しく、中高一貫教育のメリットを最大限生かした教育を展開する上で、制約が働いています。

併設型の学校ヒアリング調査においても、高校からの入学があることを前提としながら、中高一貫教育のメリットを生かした教育をいかに展開していくか、頭を悩ませているとの声が聞かれました。

 

高校での人気が低いこと、教員の受験対応に時間を取られる

併設型高校での低い受験倍率

現在、併設型高校5校では、各校2学級・80人の募集を実施しています。

しかしながら、併設型高校の倍率は、都立の全日制普通科高校平均の倍率を下回ることが多く、近年では1倍以下となる併設型高校も出ている。(白鴎高校、両国高校)

つまり中学校では倍率が5~6倍ある一方、高校では1倍以下となる高校が出ている状況です

 

併設型高校が敬遠されている理由として、

中学生で多く聞かれた理由は

・「附属の生徒となじめるか不安」が34.7%

・「高校から入学する生徒だけで高校生活をスタートしたい」が34.4%

保護者で多く聞かれた理由は

・「中高一貫校は、附属中学校から入学するからメリットがある」が56.5%で最多

・「附属では高校の内容も学習しているので、入学して勉強についていけるか不安」36.0%

・「高校から入学する生徒だけで高校生活をスタートさせたい」32.9%

・「附属中学校から高校へ進学する生徒となじめるか不安だから」32.6%

(平成28年「都内公立中学生意識調査」「都内公立中学生保護者意識査」より)

 

と至極もっともな意見に加えて、私立だけでなく都立も日比谷・西など進学指導重点校を始め多くの高校があり、構造的に受検者が増えにくい状況が見られます。



教員への負担

併設高校の募集人員が少ないことから、受検者が一人増減することによる受検倍率への影響が大きく、入学者選抜の運営が不安定になりやすい状況が見られます。

 

そうした中で、高校からの入学志望者確保のために、夏季を中心とした中学校や学習塾への訪問、秋季の学校説明会の実施などに力を注いでいます。

また、4月から翌年2月までは問題作成業務が続き、年明けからは併設型中学校の学者決定と併せて高校の入学者選抜が始まり、複数種類の入学者決定等を並行して実施していくなど、年間を通して関連する業務があります。

 

学校ヒアリング調査では、高校入学者選抜実施には多大な時間・労力を要する一方で、受検者は増えにくく対応に苦慮しているとの声が聞かれており、併設型各校にとって高校入学者選抜の実施及び受検者の獲得に関する業務が大きな負担となっているといえます。

 

高校からの入学者との差がある

最後の課題は、意識や部活動・学習において高校からの入学者と比較して、中学からの内部進学者の方が優れている実態があります。

 

生徒の意識

アンケート調査における意識・態度に関する回答結果を見ると、全体的な傾向として、内進生の肯定的回答の割合が外進生よりもやや高い傾向があり、最終学年である高校3年生については特にその傾向が強い

 

各種大会等における実績

各種大会・コンクール等での実績について、過去3年間の全国大会以上の出場・受賞実績を見ると、文化・スポーツの双方で実績があるが、個人での出場・受賞実績は概ね内進生によるもの

内進生については、高校受験のないゆとりを生かして、趣味や部活動など、自分の興味や関心があることに取り組めていることが結果に結び付いている。

 

大学進学実績

併設型は高校での新たな入学があることから、内進生と外進生が互いに刺激を与え合うことが期待されていた制度であるが、現状においては、併設型高校の受検倍率が低いため、外進生の学力が多様(低いのがいる)であるといった声が学校ヒアリング調査において聞かれた。

一般的に、中高一貫教育校は中学校入学時点で学力検査を実施しないことから、中学校入学時点で生徒の学力差が生じやすいと言われているが、都の併設型においては、高校段階で生徒の学力の幅が更に広くなりやすい状況

 

難関国立大学(東大・一橋・東工・京大・国立医学部)等への進学割合を見ると、外進生では進学推進校(都立高校3番手:三田・竹早・城東など)の平均を上回る実績だが内進生では進学指導重点校(都立高校トップ:日比谷・西・国立など)の平均に近い実績
また、難関私立大学(早慶上智)への進学割合についても、同様の傾向

 

英検取得状況

高校段階の取得率を見ると、内進生の方がより上位の級を取得している生徒の割合が高い。中等教育学校と併設型の比較では、中等教育学校の方がより上位の級を取得している生徒の割合が高いが、併設型の内進生の取得状況は、中等教育学校の生徒の取得状況に近い傾向。



<結論>併設型中高一貫校は中等教育学校へ移行

報告書では、併設型の中高一貫校では、東京都が中高一貫校を設置したそもそもの目的(=6年間一貫した継続的・計画的な教育)を果たせないと結論づけ、中等教育学校化を図る方向です。

 

<結論>

中高一貫教育のメリットを最大限生かし、より中高一貫教育の趣旨に沿った教育を展開するために、都立中高一貫教育校においては中学校段階からの入学を原則とし、6年間一貫した継続的・計画的な教育を一層推し進めていくことが望ましいと考えられる。その際、中学校段階の受検倍率が5~6倍程度あることを踏まえ、現在の併設型において高校募集を停止した上で、中学校段階の入学枠を拡大することが望ましい。(報告書P59より引用、強調は筆者)

 

今まで併設型中高一貫校の中には、「先取り学習」は必要ないという姿勢の学校もありましたが、実際、6年通じた学習をするためには「先取り学習」を含む体系的な学習が必要ということでしょう。

そうなると、同じ都立でも中等教育学校と「先取り学習」をしていた一部の併設型中高一貫校が、高い実積を上げていくのではないでしょうか。



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